2026年研究成果報告「消費者に選ばれ続けるブランド——決め手は『軸』の存在」
関西学院大学(所在地:兵庫県西宮市上ケ原一番町 1-155)社会学部・鈴木謙介ゼミは、消費者に選ばれ続けるブランドの力についての調査研究を行いました。本研究は、消費者とブランドの間で「軸」が共有されることで、ブランドが選ばれ続けるようになるというメカニズムを明らかにしています。
調査によると、消費者は「他の商品も試したい」という普遍的な欲求をもっている一方で、ブランドとの間に「軸」が共有されていると、他を試してもそのブランドに返ってくることが明らかになりました。このことは、企業にとって消費者との「軸」の共有が「選ばれ続けるブランド」をつくる上で重要であることを示しています。
エグゼクティブサマリー
- 消費者は、ひとつの商品を使い続けているように見えて、常にさまざまな選択肢を天秤にかけている
- 消費者の選択に関する「迷い」や「決め手」は、商材のもつ心理的コストによって異なるパターンが存在する
- 企業からの情報が消費者に届きづらくなっている今、「選ばれ続ける」ブランドには、消費者との間に共有された「軸」がある
調査概要
①「消費者とブランドの関わりに関するアンケート調査」
調査期間:2026年6月23日〜24日
居住地:全国
年齢:18歳〜59歳の男女
有効回答数:816名
②関西学院大学鈴木謙介ゼミによる定性調査
対象者:11〜56歳(10〜50代)の男女85名
(内訳…食品:11〜54歳の男女29名、モバイル家電:20〜55歳の男女14名、化粧品:19〜56歳の男女30名、文具:20〜50代の男女12名)
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1. 「迷える消費者」の実態
消費者は、揺さぶられている
ブランドにとって、ひとつの商品やブランドを選び続ける消費者——ロイヤルカスタマーが理想とされています。そして、ロイヤルカスタマーやブランドのファンを獲得するために、さまざまな戦略が行われてきました。
しかし、消費者は本当に「これがいい」という理由でブランドを選び続けるのでしょうか。
一見、理想の消費者に見える
私たちが行ったアンケート調査の結果、消費者は明確な基準を持って商品を選び、その商品を長く使い続けているように見えるということが、以下のグラフに示されています。

揺さぶられている消費者が4割!
消費者はお気に入りの商品を使い続けているように見えますが、実はその心の中は決して安定していません。
調査によると、「気に入ったら、ひとつの商品をずっと使い続けるほうだ」と回答した消費者の約4割が「いま使っているものより、いいものがないか気になる」、「お店に行って商品を見ているうちに、買おうと思っていた気持ちが揺らぐ」と回答しました。

これらの結果から、消費者は明確な購買基準で気に入った商品を使い続けたいと思いながらも、常にさまざまな選択肢を天秤にかけていることが明らかになりました。
これらのデータを元に、①類似商品が溢れ、競合ブランドが多いこと②購買層が特定の層に偏らないこと③一度きりの購入ではなく、日常的に継続して購入・使用する商品であることを考慮し、「化粧品」、「モバイル家電」、「食品」、「文房具」の4つの商材を取り上げ、アンケート調査とインタビュー調査を組み合わせて調査を実施しました。
これらの研究結果から、迷える消費者の実態を明らかにし、消費者に「選ばれ続ける」ブランドとはどのようなものかを追究します。
2. 消費者の迷いと後押し
ここからは、具体的な商材ごとに、消費者がどのように迷い、ブランドと関わっているのか、私たちの調査結果に基づいて見ていきます。それぞれの商材の名前をクリックすると、調査結果が表示されます。
「失敗したくない」から迷う
化粧品については、アンケート調査は基礎化粧品、インタビュー調査は基礎化粧品に限らずより広く調べました。
化粧品の消費者は、他の商品に関心を持ちながらも、動けずにいます。
「気になる商品があれば試したい」は47.8%で、いまの商品に満足しきっているわけではありません。しかし「他の商品を試して失敗したくない」は67.1%と、4商材で最も高い数値でした。

インタビューでも、失敗への不安と探し直す負担が語られました。

何を使ったらいいか、また探さないといけないから浮気はしない。(20歳男性)

新商品を使っても、肌トラブルが起きると元のブランドに戻る。安心感が重要。(21歳女性)
化粧品の失敗は、お金の損失だけでは済みません。肌トラブルという身体への影響が伴います。だからこそ消費者は、自分ひとりの判断で新しい商品に踏み出すことに不安を感じています。
決め手は「信頼できる内容の情報」
では、迷う消費者の背中を押すものは何か。インタビューで共通していたのは、「これなら自分に合う」と納得させてくれる、根拠のある情報でした。

肌診断を受けて、「この成分が入ったものを使うといい」と勧められた。その結果をもとに商品を選んでいる。(19歳女性)

美容部員の話は参考になる。その会社の人だから商品知識を熟知していて、信頼できる。(21歳男性)

インフルエンサーを参考にする。視聴回数が分かるから人気度も分かる。(20歳女性)

診断の数値、専門家の知識、視聴回数という実績。信頼する情報は人によって違いますが、いずれも「自分に合う」と納得できる根拠として働き、初回購入だけでなく再購入の決め手にもなっていました。
さらにインタビューでは、基礎化粧品に限らず、アイブロウやリップなどのメイク用品を含むメーキャップ用品にも共通して興味深いすれ違いが見つかりました。「好きなブランド」と「なくなると困るブランド」を尋ねると、両者が一致しないのです。

好きなブランドはない。ブランドとしてここが好きというより、自分の肌に合うかどうかだから。なくなると困るのは、セザンヌのアイブロウペンシル。なくなると眉毛が描けない。(19歳女性)

好きなブランドはロムアンド。パッケージがかわいくて、値段も手に取りやすい。なくなると困るのは資生堂。ずっと化粧水と乳液を使っているから。(21歳女性)
好きなブランドは「かわいい」「イメージがいい」という感情的な理由で語られる一方、なくなると困るブランドは「肌に合う」「これしか使っていない」という実用的な理由で選ばれていました。
つまり化粧品では、ブランドへの好意と、使い続ける理由は別物です。消費者をつなぎとめているのは愛着ではなく、「自分に合う」という納得です。「好きなブランド」になること以上に、「なくなると困るブランド」になることが、継続利用につながります。
「よくわからない」から迷う
本項目では、モバイル家電の中でもワイヤレスイヤホンを対象としました。イヤホンは、機能や価格が購入時の重要な判断要素となる一方で、商品の違いを比較・評価しにくい特徴を持つことから、消費者のブランド選択プロセスを明らかにする対象として取り上げました。
いいものは欲しい。でも、分からないから選ベない
以下は、イヤホンを利用している回答者を対象に、イヤホンについて尋ねた結果です。
「気になったら新しい商品を試してみたい」と回答した人は50.2%に上り、新しい商品への関心は決して低くないことがわかります。
一方で、「失敗したくない」と回答した人は55.0%。さらに、イヤホン選びでは機能(66.8%)、価格(63.0%)など、性能やコストへのこだわりも見られました。

つまり消費者は「良いものを選びたい」という意欲を持ちながらも、その違いを自分自身で判断するための基準を持てていないのです。
実際に、購入に際して感じる不安が同じく高い傾向のあった化粧品と比較すると、モバイル家電では「商品の魅力を人に伝えられる」と回答した人は31.0%で4つの商材の中で最も低い結果となりました。また、インタビューでも「商品の違いが分からない」「何を基準に選べばいいか分からない」という声が多く聞かれました。
また、日常的に使用するイヤホンでさえ、ブランド名を正確に記憶していない人が全体の約75%に上りました。
つまり、消費者が避けているのは新しいものへの挑戦ではなく、「自分の判断による失敗」なのです。
決め手は「信頼できる人の推薦」
自分では決められない。だから、人を信じる。
イヤホンでは、商品同士の違いや性能を自分自身で比較することができるほどブランドについてよく分かっていないので自分だけでは決めることを迷ってしまっている現状があります。
実際に購入の決め手としてこのように他者を参考にする声が多く挙げられました。

これは、消費者が機能を比較して判断しているというよりも、第三者の評価や使用経験に触れることで、「これなら大丈夫そう」という安心感を得ることで購入を決断していることを示しています。
つまり、イヤホンでは「自分の判断に自信を持つための信頼」が選択を後押ししているのです。
イヤホン購入を促すために必要なのは、商品の機能を一方的に伝えることではなく、「この選択なら間違いない」と思える信頼を生み出すことだといえます。
「どれでもいい」から迷う
衣食住のひとつである「食品」は私たちが最も日常的に購入と消費を繰り返す商材のひとつです。
食品の商品やブランドに関する調査を以下のように行いました。
- インタビュー調査 30名(20代~50代男女)
- アンケート調査 「飲料」について質問
2つの調査から、消費者は普段購入している商品や商品・企業ブランドへの関心が薄く、執着していないことがうかがえました。
アンケート調査では、「他の商品が気になったら、その商品にこだわらず試してみたい」と答えた人は56.8%と最も高い数値でした。また、「その商品が店頭になかったら、別のお店に探しに行く」と答えた人は18.5%、「他の商品を試すことはめんどくさいと思う」と答えた人は33.7%であり、4つの商材のなかで最も低い数値でした。

こうした回答から、「この商品しかない」という意識は弱く、他の商品への探索も継続されやすいことから、「なんでもいい」という感覚で商品を選んでいると考えられます。
本当に「何でもいい」のか?
インタビュー調査では以下のようなことが語られました。
こだわり・関心がないといった発言

「あまり食に興味を持ってないというか、特にこだわっているわけではない。~でも最近キッコーマンの豆乳の麦芽コーヒーを良く買っている。常に冷蔵庫にストックがあるようにしている。」(20代男性)

「(いつも買うのはアサヒスーパードライだが)ビールは、香るビール以外なら基本的になんでもいい。」(40代男性)
商品名やメーカー名が間違っている・うろ覚えの発言

「(ポテチを買う時は)サッポロのポテチの関西だししょうゆをよく買う」(20代男性)

「(飲料は)麦茶かウーロン茶をよく買う。オレンジで鶴瓶さんのやつとか。」(20代女性)

「パウチのなんやっけ97パーセントのチョコ78か、いや72!」(20代女性)
このようにインタビューでは、「こだわり・関心がない」という人や商品名やメーカー名を間違えている・うろ覚えという人がとても多かったです。
しかし一方で、そのような中でも継続して購入している商品が存在していることも明らかになりました。
決め手は「日常に染み付いた習慣と記憶」
アンケート調査の質問でもっとも購入する飲料を『自分にとって「いつもの飲み物」という感じがする』と回答した人は72.0%に上りました。

また、『他の商品を試しても、結局はその商品に戻ってくると思う』も57.4%に上ります。
消費者は「こだわらない」、商品名やメーカーなど「意識していない」はずの食品で、「いつもの商品」をはっきり選び分けているのです。
では、「いつもの商品」はどのように決まるのでしょうか。
日常がつくる、「いつもの」
インタビューの語りを追うと、答えの多くは消費者が今までに経験した記憶や習慣をもとに購入を決定していることがわかりました。
思い出系

「調味料は1人暮らしを機に、実家の味を再現するために母に聞いて同じものを買うようになった」(20代女性・オイスターソース)

「子どもの頃に祖母が使っていた。値段は他より少し高いが、取り寄せてでも買っている。」(40代女性・だし)

「小学生の頃、父が作ってくれたのを覚えている。今でも焼きそば類でいちばん美味しいと思う」(20代男性・焼そば)
用途・パッケージ系

「ポッキーはシェアハピじゃないけどみんなで食べる用。スーパーとかでお菓子コーナーで見るが、1人で帰るだけの時なら買わない。」
「ガルボは彼氏もめっちゃ好きで、彼氏といる時によく買う。ドライブのお供にもちょうどいいし。」(20代女性)

「特濃は部活とかで疲れた時に、甘いもの飲みたい時に買う。炭酸もそんなに強くないし一気飲みできる。」(20代女性)

「Qooの小さいやつはちょうどよくて買ってる。仕事前はいつもギリギリで駅の決まった自販機で買ってる。」(20代男性)
このように、消費者は自身の記憶や経験を頼りに、「昔から馴染みのあるこの味」「〇〇といるときはこの商品」「疲れた時はこれ」など、自身の欲求に合わせて「いつもの商品」を使い分けていることがわかりました。

つまり、こだわりがないのではありません。消費者は経験や習慣、用途という「基準となる記憶」を無自覚に持っています。その基準をもとに「いつもの商品」を選び続けているのです。商品名やメーカー名を覚えていなくても、この基準は揺らぎません。
「自分にとっての機能」が大切
文房具では、「愛用している、または、よく使う文房具」として商品を挙げた人を対象にアンケート調査を実施しました。
その商品の購入に際し、「こだわるポイント」として各項目がどの程度影響したかを5段階で選択してもらうと、「『機能』が強く影響した / やや影響した」という人が76.9%と最も多いことがわかりました。

また、インタビュー調査においても、購入時のこだわりとして「機能」を挙げる人が多くみられました。

実際の声を踏まえると、ここで着目すべきものは、単にブランドが提供する機能全般というより、その中で個々の消費者のニーズに一致したものを指す「自分にとっての機能」のようです。
「オンリーワン」のブランドを求める
強く独立した軸としての「オンリーワン」
ここまで、「機能」をこだわりとして購入を決めた例を紹介してきました。
しかし、そのような消費者ばかりではありません。
今回のインタビュー調査では、「購入時には情報探索をせず、こだわりが弱かったのに、徐々に『これじゃなきゃだめ』という感情が芽生えた」という興味深い事例を多数確認することができました。

これらのインタビュー結果から、大きく分けて2種類の「こだわり」が見えてきます。1つ目は、商品自体が持つ機能であり、客観的で他の商品との比較の軸となる「こだわり」。2つ目は、1つ目の「こだわり」に、思い出や使ってきた経緯などの主観的な意味が上乗せされた「こだわり」です。
前者に基づいて購入される商品は、他の競合商品と同じ尺度で測られます。ここで選ばれるものは、その尺度の中で暫定1位のもの。つまり「ナンバーワン」だから「今は」選ばれるということです。
一方、後者に基づいて選ばれる商品は、他の商品とは比べられない別格の存在です。消費者にとって唯一無二のもの、つまり「オンリーワン」の商品と言えます。そのため、選ばれ続ける可能性が高いでしょう。
「購入時には情報探索をほぼせず、こだわりが弱かったのに、徐々に『これじゃなきゃだめ』という感情が芽生えた」という事例は、「偶然の出会いにはじまり、向きあっていく中で、その文房具が『ナンバーワン』から運命の相手である『オンリーワン』へと移行した」というふうに説明できるのではないでしょうか。
本調査では、消費者と文房具との関わりについて、購入時にすでにこだわりを持つ場合ばかりではなく、商品やブランドと向き合う中で将来的にこだわりを見出す可能性もあるということが見えてきました。
3. まとめ
ここまで、4つの商材ごとに消費者の「迷い」と「決め手」を見てきました。迷いの形も決め手もばらばらに見えますが、4つの商材を比較すると、2つの発見が浮かび上がります。
鍵になるのは、商品を選ぶ際の「心理的コスト」です。「他の商品を試すのはめんどくさい」「他の商品を試して失敗したくない」の両方に「そう思う/ややそう思う」と答えた割合で測ると、商材ごとに差が出ました。

※文房具は『愛用している商品がある』人(全体の25.5%)のみが対象のため、他商材と単純比較はできない
化粧品とイヤホンは心理的コストが高く、食品は低いことがわかります。
では、不安を抱えた消費者は、何を頼りに購入を決めているのでしょうか。そして、心理的コストが高い商材ほど消費者は離れずにいてくれるのでしょうか。調査結果から、私たちはこのように考察しました。
- 判断を委ねられる情報を求めている一方で、企業からの情報は消費者に届きづらくなっており、商品の正確な記憶も困難になっている
- 選ばれ続けるブランドは、消費者の求めているものと一致する価値を提供している
以下、詳しく見ていきます。
発見①消費者は心理的コストが高い商材ほど判断を委ねられる情報を求める
調査の結果、化粧品のような失敗した場合に身体への影響がある商材、また、イヤホンのように商品についてわからないことへの不安が働いている商材は、他に比べて失敗を恐れる傾向が強く表れていることがわかりました。
そして、この心理的コストの高い2つの商材では、消費者は購入の判断を外部に委ねていました。化粧品では根拠のある情報が、イヤホンでは信頼できる人からの推薦が、購入の決め手になっていたのです。対して、心理的コストの低い食品では、消費者は外部の情報をほとんど頼っていませんでした。決め手は昔からの味の記憶——本人も自覚していない、自分の中にある基準でした。
判断を委ねられる情報を得るために、消費者は様々な情報媒体を利用します。

インターネットの検索エンジン、店頭のパッケージや陳列、口コミ、SNS、動画レビュー――消費者は複数の媒体を組み合わせて情報を集めています。その中で、企業が公式に発信する情報だけでは、消費者の判断を左右する決定的な材料になっていません。
このことは、イヤホンの調査でも裏付けられました。「あなたが実際に使用する・しているイヤホンの商品名・ブランド名をお答えください」という質問に対して、61.3%の人がメーカー名や、「Amazon」「スリコ」のようなその商品のことが分かるキーワードで回答し、商品名を正確に回答したのは23.2%にとどまりました。

この結果から、消費者は企業が伝えている具体的な商品名よりも、商品を買った場所やメーカー名など「その商品のことが分かるキーワード」を強く意識していることがわかります。多数の消費者が商品名を間違えたり、覚えていなかったりする実態も明らかになりました。
つまり、企業が発信している情報は、消費者に「判断を委ねられる信頼できる情報」として届いていない可能性があるのです。

つまり、テレビCMで商品名に触れる機会が減り、曖昧な記憶でも検索すれば簡単に出てくる今の時代、企業が情報を出すだけでは、消費者は商品を正しく記憶できない場合があるということです。
発見②「戻ってくる」の背景には、企業と消費者の「軸」がある
一度選ばれたブランドは、そのまま消費者をつなぎとめられるのでしょうか。その手がかりとして、「他の商品を試したとしても、結局はその商品に戻ってくると思う」に「そう思う/ややそう思う」と答えた割合を、4つの商材で比較しました。

※文具は『愛用している商品がある』人(全体の25.5%)のみが対象
商材によって、大きな差が表れました。特に注目したいのは、心理的コストが同程度に高いはずの化粧品とイヤホンで、「戻ってくる」の数字に大きな差があったことです。化粧品が50.4%であるのに対し、イヤホンは32.7%。心理的コストが高いからといって、消費者が離れずにいてくれるとは限らないことがわかります。
消費者は一人ひとり、自分だけの求めるものを持っています。そして企業もまた、自社だけの提供する価値を持っています。使い続ける傾向の強い商材で語られていたのは、この消費者が求めるものと、企業が提供する価値とが一致した状態でした。
例えば化粧品では「自分の肌に馴染む」ことを求める消費者に対して、企業がその肌質に合う成分を提供している。食品では「実家の味を再現したい」という消費者の求めに、企業のこだわりの原料や製法が応えている。それぞれの商材で、消費者と企業が同じ方向を向いている状態が見られました。
就職活動では、自分が何を求めるかを言葉にした基準を「就活の軸」と呼びます。自分の軸と、企業が提供できるものが重なったとき、人はその企業を選びます。消費者と商品の間にも、それと同じものがあるのです。自分の求めるものと、その商品の価値が重なっている——だから、他を試しても戻ってくる。「戻ってくる」とは、消費者とブランドの間に軸があることの表れなのです。
4. 選ばれ続けるブランドになるためのヒント
AIは後押しのためのツールに
購買時にAIを情報探索ツールとして使ったことがある20代(n=132)に用途を尋ねたところ、複数の商品で迷ったときが55.2%と最多で、迷った気持ちを後押ししてほしいときが46.5%でした。
つまり、AIは20代にとって単なる情報収集の手段ではなく、「判断補助」、すなわち後押しの役割を担っていることが分かります。このことからもAIは消費者にとって購買における意思決定プロセスの中の「決断のパートナー」として用いられています。
診断ツールで判断基準を育てる
化粧品では、失敗への不安が大きく、「自分の肌に合うか」という判断基準が見られました。またイヤホンでは、「自分に合った商品がわからない」からこそ信頼できる人の情報を頼るという事実が見られました。
企業には、消費者に「診断ツール」などを通じて判断基準の形成を促すとともに、商品との適合理由を根拠ある情報で提示することで、長期的に選ばれる関係を築くことが求められます。
「こだわり」の種を提供する
食品の調査では、習慣や記憶に結びついたこだわりを持ち、「みんなで食べるとき」「疲れているとき」など、場面によって使い分けている人が見られました。つまり、「この場面ではこれ」というふうに他の商品と比較されることなく選ばれています。文房具の調査でも、他の商品とは比べられない別格の存在である「オンリーワン」の商品が確認されました。
そのため企業は、「この場面ではこれ」「もともとこういうものが好き」といった、その商品が「オンリーワン」になるためのこだわりの種を提供することが効果的です。
